黄綬褒章受賞!寺島さんに聞いた”こども未来絵”

―ご自身のお仕事を、子どもにも分かるように説明していただけますか? 

私はモーター本部の製造部で、自動車用の小型モーターをつくる仕事をしています。 
私が担当しているのは、新しいモーターを開発するための部品や、生産ラインの中で壊れてしまった部品を修理するための部品をつくる仕事です。 
材料の塊を削って、さまざまな部品の形にしていく。簡単に言えば、そのような仕事をしています。 

―ワークショップに参加しようと決めた理由を教えてください 

デンソーサイエンススクールの事務局から、講師の皆さんに「こういうワークショップがあるのですが、どうですか」とお話をいただきました。 
サイエンススクールの講師は、普段から学校に出向いて理科の授業をするなど、子どもと接する機会が多いので、子どもの意見を引き出す役に向いているのではないか、ということだったと思います。 
私自身、子どもと接することがもともと好きなので、「予定が重ならなければ大丈夫ですよ」と回答フォームに丸を付けたところ、「では、お願いします」となりました。私以外にも、サイエンススクールで講師をされている方が参加しています。 

―サイエンススクールで講師をされている楽しみは何でしょうか? 

やっぱり、子どもたちのリアクションがすごくいいんですよね。 
初めて見るものに対して、驚きや喜びを全身で表現してくれます。そういう姿を見ていると、こちらもすごく元気をもらえます。 
準備には手間がかかるので、苦労もありますけどね。もちろん、つまらないときには「本当にノーリアクションだな」ということもありますが、それも含めて楽しい思いをさせてもらっています。 

―子どもたちの発想で驚いたことがあれば教えてください 

例えば、「宇宙道路」という考え方です。とにかく設計がすごく細かいんですよ。 
道路を使ってステーションまで行くのですが、帰りは滑り台で降りてくる。「その間、車はどうするの?」と聞いたら、ちゃんと駐車場に入るようになっていたり、罰金制度まで用意されていたりするんです。 
そこで使う電気は太陽光パネルでつくり、その太陽光パネルも太陽を追尾するようになっていました。本当に細かいところまで考えられていますよね。そういうところを深掘りしていくと、聞けば聞くほど、どんどん話が出てくるんです。 
ほかには、羽の付いた椅子で自由に飛んでいける、というアイデアを考えた子もいました。その椅子も、操作するボタンの機能まで全部設定されていました。 
Aボタンを押すと上昇して、左側のボタンを押すと別の方向に動くなど、非常に細かく考えられているんです。 
単に思い付いたものを描いているのではなくて、実際に自分が使うときのことまで想像しています。空に上がったときには双眼鏡が出てきて、周りを見渡せたり、別のボタンを押すと写真を撮ってくれたりする。そんなところまで細かく設定されていました。 
かと思うと、「このボタンを押すとソフトクリームが出てくる」という機能もある。そういうところは、やっぱり子どもらしくていいですよね。 

―ワークショップで子どもと一緒に考えるときに、難しかったことはありますか? 

子どもから話を聞き出そうと思っても、自分から話せることには限界があると思います。 
そこでこちらから質問を投げかけて、その答えを受けて、さらに考えを引き出していきます。そこからもう一段掘り下げていくと、どんどんアイデアが出てくる、という感じでした。 
一方で、デンソーの技術については、ある程度説明しないと、子どもたちのアイデアとうまくつながらないところもありました。 
例えば「こういう環境に関係する技術だよ」と説明すると、「それならこれも該当する」「あれも該当する」となって、結局ほとんど全部が当てはまるような感じになりました。 
社会問題や環境問題など、いろいろな要素がありますからね。「数に制限はない」と聞いていたので、「該当するなら、これも入れよう、あれも入れよう」と、いろいろ盛り込みました。 

―他に面白いと感じたアイデアがあれば教えてください 

例えば、水の上に家を建てるというアイデアがありました。 
それも自分の家だけが水の上にあるのではなく、水位が上がって陸地がなくなった世界を前提にしているんです。 
そうなると、生活に必要なインフラもすべて島の上につくることになります。デパートや学校、家など、生活に必要なものが全部そろっていて、それぞれが工場エリアなどに分かれた、街づくりのような構想になっていました。 
「島に住んでいて、友達の家へ行くにはどうするの?」と聞くと、一人ひとりがボートを持っていて、ボートに乗って移動することまで考えていました。 
動物園や、そこにいる動物たちがどのように生活するのかといったところまで考えていたと思います。 
そういう世界で実際に生活できるように、リアルに想像して絵にしているところがすごいですね。 

―ご自身が子どもの頃と比べて、今の子どもたちに感じる違いや魅力はありますか? 

今の子どもたちには、いろいろな情報が入ってくるんだろうなと感じましたね。 
SNSなどを通じて、子どもたちがいろいろな情報を自由に見られる状態になっています。僕らの頃はテレビくらいしか情報源がありませんでしたが、今はいろいろなものに触れられるので、その分、子どもたちも賢くなっているのかなと感じます。 
今は何でも検索できるじゃないですか。僕らの時代は、分からないことがあっても、親に聞くか、せいぜい辞書で調べるくらいしかなかったと思います。 
今はインターネットで調べられるので、そういうところから、いろいろなことが子どもたちの知識になっているのかなと思います。 

―今回のワークショップとサイエンススクールとの違いは何ですか? 

サイエンススクールでは学校へ出向き、5年生の授業を2コマ担当します。教科書に沿った内容を基本としながら、実験や説明を加え、子どもたちに理科の面白さを伝えていきます。 
今回のワークショップは、子どもたち一人ひとりの発想を起点に、その考えを一緒に膨らませていく進め方でした。講師がガイドする場面はありますが、それぞれ異なるアイデアに向き合うため、サイエンススクールとはまた違った関わり方が求められました。 
あらかじめ子どもたちの絵を見せていただき、「このようなアイデアを出している子どもたちが参加します」と聞いていました。ただ、実際に会うまではどのような子なのか分からないので、当日は目の前の子どもの話を聞きながら、その子の考えに合わせて進めていく、という感じでした。 

―ワークショップの中で、ほかに気になったことはありますか? 

自分のチーム以外の進め方も時々見ていたのですが、本当にすごい人たちが集まっているんだなと思いました。 
子どもたちを笑顔にしようという姿勢もすごくよかったです。 
僕たちのチームは2人の子どもを担当していましたが、3人を担当しているチームもありました。あの限られた時間の中で、子どもたちの考えをうまくまとめていく姿を見て、本当に対応力がすごいなと感動しました。 
子どもたちの発想だけでなく、ワークショップを進めている皆さんの対応にも感心しました。テレビや雑誌でしか見たことがないような方もいらっしゃって、「すごいな」と思いました。 

―それぞれの作品にはどのような特徴があり、特に印象に残った作品はありましたか? 

中でも印象に残ったのは、シャボン玉に乗って空を飛ぶというアイデアです。シャボン玉に乗るという発想自体は、誰もが一度は思い浮かべるかもしれません。 

ただ、その柔らかそうな特徴を生かして、車や潜水艦、宇宙ロケットなど、さまざまな乗り物に変形できるようになっているんです。それだけでなく、柔らかくて寝心地のよいベッドにもなるというのが、とても面白いと思いました。ベッドになると色が変わり、外からのぞかれないようになるというところまで考えられているのも、すごいですよね。 

また、シャボン玉同士が空中でくっついて大きくなる様子から、この乗り物も、ほかの人のシャボン玉と合体できるという発想につながったそうです。普段何気なく見ているものから、そこまでアイデアを膨らませられるのは、子どもならではだと感じました。 

―保護者の目線、または企業人の目線から、子どもたちにはどのような少年少女時代を過ごしてほしいと感じていますか? 

私は地元で、理科の実験を行うボランティア活動にも参加しています。 
その活動は、実験が好きな子どもを育てたいという先生の思いから始まったものだと思います。実験の楽しさをきっかけに、理科やものづくりに興味を持ってもらう活動です。 
もう20年ほど続けているので、活動を始めた頃に参加していた子どもたちは、すでに大人になっています。今では実際に理科の先生や技術者になった人も結構います。 
かつて参加していた子が、今度は自分が前に立って、講師として来てくれていることもあります。そういう姿を見ていると、子どもたちには、ものづくりに興味を持って取り組んでもらえるとうれしいなと思います。 
後継者を育てているつもりはなかったのですが、まさか本当に、参加していた子どもたちへ活動が引き継がれていくとは思いませんでした。 
私自身もものづくりが好きで工業高校に入りました。自分の好きなことを次の世代へ伝え、それがまた実を結んでいくのはいいことだなと思います。 
学校によっても、子どもたちの反応にはかなり違いがあります。最初から理科が好きな子が多い学校もありますし、理科にあまり興味を持っていない子が多い学校もあります。 
「理科離れ」と言われていますが、最初から積極的に質問してくれる子もいます。一方で、難しい話だけでは興味を持ちにくい子も、実験をすると関心を示してくれることがあります。 
やっぱり、実際にやってみることが、興味を持つきっかけになるんだと思います。 

―子どもたちへのメッセージをお願いします 

今回のワークショップでもそうでしたが、発想をどんどん膨らませて、これから先の未来に夢を持ってほしいと思います。 
そして、自分たちで新しい生活をつくり、これからの時代を担っていってほしいですね。