レジェンド技術者!原さんに聞いた”こども未来絵”

―ワークショップに参加しようと決めた理由を教えてください 

最近は、正解のない時代ですよね。常識にとらわれず、いろいろと考えることが大切だと思っていたときに、ちょうど「こども未来絵ワークショップ」の話をいただきました。 
子どもたちが実際にどのような柔軟な発想をするのか知りたいと思ったのと、自分も子どものような無邪気な気持ちで物事を考えられるようになったらいいな、という思いがあり、参加しようと思いました。 

―ワークショップに参加してみて、当日感じたことを教えてください 

子どもたちが自分の絵を持ってきて、それをもとにみんなでアイデアを膨らませていきました。 
最初は自分の絵にこだわっていた子も、ほかの人から違うアイデアを聞くと、そこから新しいアイデアが次々と出てくるんです。 
私たち大人は、どちらかというと論理的に考えがちですが、子どもたちは言葉や理屈にとらわれず、直感的に考えています。直感的に考えるからこそ、気兼ねなくアイデアを出せる。そこがいいなと感じました。 

―どんどんアイデアを膨らませていく光景は印象的でした。その中でも、原さんが特に興味深いと感じた事例はありますか? 

一つ印象に残っているのは、水をきれいにするというアイデアです。 
そこから、災害の話などへどんどん広がっていき、最後は水の循環についても話が盛り上がりました。私たち大人であれば、水問題や気候変動といったことを考えると思いますが、子どもたちは、最初の小さな考えから、10分くらいの間にどんどん大きく、直感的に話を広げていきました。 
周りの子どもたちも、その発想につられるように意見を出してくれたんですよね。そこが印象的でした。 

―子どもたちがどんどん積極的になっていく様子を感じられたのですね 

そうですね。最初は、知らない人や大人の前ということもあって、緊張していました。 
子どもたちも「この大人はどういう人だろう」と相手を観察していたのかもしれません。ただ、こちらがピュアな気持ちで接することで、話を広げていくという意味では、すごくよかったですね。 

―ワークショップで子どもたちと一緒に考える中で、楽しかったことは何ですか? 

やっぱり楽しかったですね。 
アイデアが広がるように、私が「こういうところには使えないかな?」と問いかけると、そこからアイデアがたくさん出てくるんです。そういうところは、やっぱりすごいなと思いました。 

―子どもたちのアイデアがどんどん膨らんでいったのですね 

そうですね。 
意外と、少し近いアイデアであれば、大人はあまり口にしないじゃないですか。でも、子どもたちは近いアイデアでもどんどん口にします。そうしているうちに、最終的には元のアイデアからかなり離れたところまで発想が広がっていくんですね。 
そういう力が子どもにはあるのかなと思いました。開発の現場では、なかなかそこまで発想を広げられないと思いますね。 

―ワークショップで子どもたちと一緒に考える中で、難しかったことは何ですか? 

リサイクルショップのような、現実の世界にあるものを題材にしたときですね。 
私たち大人は現実の仕組みを知っているので、そこからさらに発想を広げることが難しかったです。 

―そのとき、工夫されたことはありますか? 

もともとは、子どもたちが考えたロボットやおもちゃの話だったと思います。そこから、ゲームを交換するといった話に広がっていきました。 
さらに、「未来ではどうなっているんだろうね」「日本ではこうだけれど、海外ではどうなんだろう」と話を広げました。世界中で使われるといった話や、地球だけではなく宇宙でも使えるのではないか、といった話にも広がりました。 
ただ、広げすぎて、まとまりがつかなくなってしまいましたね。 

―子どもたちの発想で、驚いたことがあれば教えてください 

大人には固定観念がありますが、子どもにはそれがありません。 
大人は自分の知っている範囲で考えますが、子どもたちは知らないからこそ、自由に発想できます。それでいて、そこに自分の考えも入れていくんです。 
子どもたちは本当にピュアで、思ったことをすぐに言える。それが直感的な発想につながっているのだと思います。 

―ワークショップの中で、印象に残ったエピソードはありますか? 

最初の段階では、よく話す子と、あまり話さない子がいました。それでも、最後にはみんなが話すようになったんです。それだけでも、子どもたちは変わるんだなと思い、少し驚きました。 
最初は積極的に話す子と、そうでない子がいましたが、最後は男の子も女の子も、みんなが嫌がらずに発表しようとしていました。 
私自身の子どもの頃を考えると、発表することを嫌がっていたと思います。エンジニアも、どちらかというと人前で話すことがあまり得意ではない人が多いかもしれません。 
今はいろいろなコミュニケーションツールもありますし、私たちの頃とは違うのかもしれませんね。 

―原さんが子どもだった頃と、今の子どもたちとの違いを感じたことはありますか? 

全然違いますね。 
趣味を聞いたら、「推し活です」と答えた子がいたんです。それを聞いたときに、現代の子どもは違うなと思いました。「推し活」という言葉自体、お母さんなどから聞いて知ったのかもしれませんが、私たちの頃にはなかった感覚ですよね。 
「誰を推しているの?」と聞いたら、「それは言えません」と答えていて、すごくかわいかったですね。 
今の子どもたちはオープンで、物おじしないのでしょうか。大人から見ると、もう少し人見知りをしたり、警戒したりするのかなと思っていましたが、あまりそういうことはありませんでした。 
ただ、今回参加した子どもたちが、もともとそういう子たちだったのかは分かりません。 
それでも、最初は緊張して話さなかった子も、最後には話していました。最後はみんなで発表できたので、よかったですよね。一人だけ盛り上がれないような状況にはならなかったと思います。 

―子どもたちの直感的な発想や、夢を持つことの大切さについて、あらためてどのように感じましたか? 

そうですね。連想する力や直感力ですね。 
論理的思考のように因果関係をすぐに考えるのではなく、その場で思ったことを、瞬発的にすぐ口にする。新しいことを考えるときには、そういう力が大切だと思います。 
最近はAIの時代だと言われますが、AIの答えを信じきってしまうところもありますよね。人は過去の経験を信じたいと思いますし、実際に経験したことについては強いと思います。ただ、あまり経験していない世間一般のことについては、外したら恥ずかしいという気持ちもあります。 
それでも、自分がやりたいことに向けて頑張ることは、これからの時代には特に重要なのだと思います。これからは、自分に経験がないことにも向き合う場面が増えると思うので、なおさらそう感じます。 
もう一つ思ったのは、最近、中学校や小学校から「講演してください」と言われることが時々あるんですね。その理由を聞くと、先生方は「最近の子どもたちには夢がない」と感じているようです。 
でも、今回参加した子どもたちを見ていると、それとは全然違うのではないかと思いました。 
今の子どもたちは「YouTuberになりたい」と言うこともあります。それを大人は「それが夢なのか」と思うかもしれませんが、夢というのは、まず「自分が一番好きなことをやれたらいいな」というところから始まるものだと思います。 
今回参加した子どもたちを見て、やっぱり夢を持つことが重要なのではないかと感じました。 
今はいろいろな情報があるので、さまざまなことをやってみたいと思える環境があります。そういう意味では、今の環境は逆にいいのかもしれないと思いました。 
私たちの頃の夢といえば、サッカー選手、プロ野球選手、研究者、政治家など、だいたい同じようなものだった気がしますからね。 

―保護者の目線、または企業人の目線から、子どもたちにどのような少年少女時代を過ごしてほしいと感じていますか? 

やっぱり夢や好きなことに、どんどんチャレンジしてほしいですね。 
いろいろな好きなことに取り組む中で、自分に一番向いているものが夢になっていけばいいと思います。そのためにも、今好きなことだけではなく、いろいろなことに興味を持ってもらうことが大切だと思います。 
子どもたちはもともと好奇心を持っています。その好奇心を大切にしながら、好きなことに取り組んでほしいですね。 
ただ、一つの好きなことだけに集中しすぎるのではなく、その周りにあるさまざまなことにも好奇心を持ってほしいと思います。それが、これから社会に出ていくうえでも大切なのではないでしょうか。 
中学校、高校と進み、受験などで詰め込み型の勉強が増えると、好きなことや好奇心がだんだんなくなってしまうことがあります。それは少し寂しいですよね。だからこそ、好きなことをずっと続けることが重要だと思います。 
知識を身につけることは重要です。ただ知識を詰め込むだけでは、その知識をどう使えばよいのか分かりません。 
外で遊んだり、自分たちで遊び道具を作ったりすることも、知識を使う経験の一つだと思います。しかし、コロナ禍で外に出る機会が減り、夏は熱中症の心配もあって、外で遊びにくくなっています。そうした経験が少なくなるのは、少しかわいそうだと思います。 
知識を身につけるだけではなく、好きなことに取り組みながら、その知識をどう役立てるかを考えることが大切なのではないでしょうか。 
今回も、子どもたちは自分の好きな絵を描いてきて、そこから周りの人と一緒にさまざまなアイデアを出し、どんどん発想を広げていました。 
そうしたことは、日常生活の中でもできると思います。少し工夫しながら、発想を広げる経験をしてほしいですね。 

―今の子どもたちは学校での活動だけでなく、探究活動も盛んになり、外に目が向き始めていると思います。それについて、どのように考えますか? 

いいと思いますね。 
自分で調べること自体が、子どもたちは好きなのだと思います。言われたことをそのままやるよりも、知識を使うことが重要だと思うんです。 
あまり興味のないことを一生懸命考えるのではなく、探究活動の中で試行錯誤を繰り返す。「これがよくなったから、次はもっとよくしよう」というサイクルが重要ですよね。 
単に「言われたからやる」、あるいは宿題のような感覚で取り組むだけでは、なかなか続きません。好きなことであれば、もっと磨いていくことができますし、そこから新しいアイデアも出てきます。 
身近なことから始めて、自分の好きなことを追究していく。その先に、また次の世界があるのだと思います。 
もう一つ言いたいのは、いろいろな好きなことが興味につながり、そこから感動が生まれるということです。 
「これは素晴らしい」「きれいだな」と感じたり、例えば、サッカーを見て「これはすごい」と感動したりすると、「自分もサッカーをやってみようかな」と思いますよね。感動は、行動の原動力になるものだと思います。 
今の子どもたちは、いろいろな情報に触れています。映像もとてもきれいになり、感動できるものはたくさんあります。 
その中で少しでも「いいな」と思うものがあったら、もっと調べたり、より深く知ろうとしたりして、没頭していく。そこから好奇心が生まれてくるのだと思います。 

―子どもたちへのメッセージをお願いします 

夢は自分を成長させてくれるものだと思います。 
常に夢を持ち、それを実現するために、いろいろな情報を集め、頑張ってほしいと思います。 
日本は今、あまり元気がないと感じることもありますので、少しでも多くの方にエンジニアを目指していただけるとうれしいです。